第30回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

大賞受賞作

『魔女に首輪は付けられない』

著/夢見大蛇之介

電撃文庫

魔女に首輪は付けられない

著者   : 夢見大蛇之介
発売日  : 2024年2月9日

私が望んでいることはただ一つ、『楽しさ』だ。

私が望んでいることはただ一つ、『楽しさ』だ。

あらすじ

貴族階級が独占していた魔術が、大衆化するとともに犯罪率が急増。対策として皇国には魔術犯罪捜査局が設立された。捜査官であるローグは上司ヴェラドンナの策略により、かつて皇国に災いをもたらした魔女と魔術事件を捜査する〈第六分署〉に配属されることに。魔女たちは皆、厄災をもたらすまでの魔術能力を制限すべく〈首輪〉を付けているのだが、捜査を共にする〈人形鬼〉ミゼリアをはじめ、そんなことはお構いなしに振る舞う!
「ローグ君、一言でいいんだ。私に命令してくれよ。その男に魔術をかけろって。一言でいいんだよ。そいつの精神は崩壊するけど事件は解決するよ!」
〈首輪〉を付けた魔女たちに試される、ファンタジーアクション!

受賞者プロフィール

神奈川県で誕生。ホラーが好き。でも恐怖体験は苦手です。

受賞者コメント

自分だけの良い感じな物語を生み出したくて小説を書き始めたわけですが、でもそう上手くはいかないもので、落選が続くにつれ、色んなものがぐにゃぐにゃしてきました。自信もなくなりました。結局のところ大賞を頂いた今でさえ、それは変わっていません。だけど下を向いている場合ではないので上を向くことにします。拾って下さった担当さん、選考委員の方々、それから何より支えてくれた家族の皆、ありがとうございます。頑張ります。

選考委員選評

  • 三雲岳斗(作家)

    とにかくキャラクターの魅力が際立つ作品でした。厄介者ばかりを集めた部署に左遷させられた捜査官という設定は決して目新しいものではありませんが、テンポの良いストーリー運びと個性豊かな登場人物たちの掛け合いでグイグイと物語に惹きつけられます。魅力的だけれども油断のならないヒロインたちとの駆け引きが印象的で、そこが大賞受賞を決定づけた最大の要因だと思います。

  • 三上 延(作家)

    最終選考候補作の中では語りの上手さで頭一つ抜きん出ていました。クセの強いヒロインたちの魅力もさることながら、彼女たちをきちんと描き分け、多数のキャラクターも含めて出し入れする手際の良さは新人離れしています。物語をバディものの安易なフォーマットに落ち着かせなかった点も好印象で、今作の続編だけではなく、今後手がけるであろう他の作品も楽しみです。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    かなり小説を書き慣れている印象で、文章もサクサクと読みやすい。しかしその反面でいろいろ手慣れすぎている印象を受けてしまい、私自身はあまり強く推せなかった作品です。しかし、他の選考委員の方の強い推薦もあり、また、面白さと完成度という部分においては全く問題がなかったため、大賞という選考結果には異論はありません。ただ、次はこの作者さんの、血が吹き出るかのような渾身の一作が読んでみたいです。

  • 小原信治(放送作家・脚本家)

    今なお世界で繰り返される魔女狩りという惨劇を「首輪を付ける」というモチーフで記号化。裁く者と裁かれる者を軽妙な会話を繰り広げるバディにしたことで、魔女という宿命を背負った者たちの孤独と悲しみ、本当の正義は裁く者と裁かれる者のどちらにあるのかという深刻なテーマを乾いた筆致で描き出した良質のエンターテインメント。魔女が裁く者の裏を掻いて自由を獲得するラストは胸が空く。電撃文庫らしい作品でした。

  • 阿南浩志(電撃文庫編集長)

    兎にも角にもエンターテイメントに振り切った内容です。指揮官として立つ主人公とその部下として行動を共にする女性たちという組み合わせは、昨今のゲーム等でも非常に多く見受けられる構造ではあるのですが、しっかり王道の面白さと女の子たちの魅力を描けている完成度の高い作品です。また終盤の展開やオチにもインパクトがあり、ベタにとどまらない満足感と読後感を与えてくれます。メインヒロイン・サブヒロインともに個性があり、ビジュアルが与えられることでさらに爆発的に面白いIPになると確信できる、いまから刊行が楽しみな作品でもあります。

  • 遠藤充香(メディアワークス文庫編集長)

    強大な力をもつ邪悪な魔女達とタッグを組む捜査官の、身を切るようなかけひき、怒涛の心理戦、舌戦の応酬の数々に、気づけばすっかり虜になっていました。情報処理も巧みで軽妙に読み進めることができ、飛び抜けた完成度の高さに納得の大賞受賞となりました。心痺れる最強魔女ミゼリアをはじめとする、魅惑的な魔女達と主人公ローグの掛け合いがもっと読みたく、早くも続編希望です。

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