第30回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

銀賞受賞作

『億千CRYSTAL』

著/長山久竜

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電撃文庫

億千CRYSTAL

著者   : 長山久竜
発売日  : 未定

あらすじ

「どうしようもなく世界に嫌われている」。交通事故によって、夢と唯一の肉親を失った高校生・月城一輝(つきしろいっき)。自ら命を手放そうとした彼の行動は――とある少女による不意のキスで邪魔される。星宮未幸(ほしみやみゆき)。かつて一世を風靡した国民的美少女。清楚売りのくせに素は超高慢。だけど世話焼きでーーそして、未来が視える少女。彼女との邂逅は、水晶のように光輝く日々へと月城をいざなう。これは、未来を失った少年の心を揺るがす、すこしフシギな青春疾走譚。

受賞者プロフィール

愛知県名古屋市出身。好きなものはラーメンとカラオケとライブ。マンモスイベントが名古屋を飛ばしがちである事に不貞腐れる日々です。最近は奥さんを音楽フェスの世界に引き摺り込みました。耳が良いので自分より早く新曲を覚えてしまい、不貞腐れる毎日です。

受賞者コメント

数年前、作家を目指す数人の知り合いでグループを作りました。誰が言ったか「賞金でお肉を奢りたい」を合言葉に、お互いに切磋琢磨(おしゃべり)するのはバクマン。のようで楽しかったです。それから二、三年はみんな分厚い公募の壁に弾き返されてきましたが、昨年の今頃に一人のデビューが決まった事を革切りに次々と受賞者が現れ、なんと自分で五位タイです。自分が記念すべき第30回電撃大賞で銀賞を頂くことが出来たのは、彼らとの交流があったからこそである事に疑いの余地はないです。本当に感謝しています。また、本作を銀賞に値すると選んでいただいた選考委員の皆様にも厚く御礼申し上げます。息の長い活躍が出来るよう頑張ります。

選考委員選評

  • 三雲岳斗(作家)

    話題のデジタルネクロマンシーを先取りしたような内容の作品ということで、目の付け所は良かったと思います。ただ作中で描かれている技術が現実のものよりも古く、アイデアがありきたりで浅く感じられてしまうのが残念でした。それらを抜きにした純粋な青春小説としてみた場合、ヒロインや周囲のキャラクターたちの魅力が光る作品だと思います。導入部の主人公の態度や心境がやや共感しづらいので、その部分が改善されることを期待します。

  • 三上 延(作家)

    個人的に推した作品です。ボーカロイドを重い題材に絡めた着眼点を高く評価しました。人前で自死しようとする主人公のキャラクターや、ヒロインの超能力の必然性など、首をひねる部分もありましたが、強気なヒロイン、臆病なサブヒロインとの関係も丁寧に描かれていて、王道のラブストーリーに仕上がっています。日記形式を多用した終盤がやや駆け足で、もう一つ大きな盛り上がりが欲しかったところ。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    前半、主人公に全く好感が持てないのがかなり辛く、選考委員でなければ投げ出していたかもしれません。が、後半に至り、導入からはほぼ予想の付かない『なるほどそう来たか』というラストは、自分では考えつかない、多分、21世紀に育ってきた世代だからこそのものか、と唸らされました。最後の詩にもじわりとさせられ、かなり好きだと思えた作品です。アニメ映えしそうなので、伸びてくれると嬉しいです。

  • 小原信治(放送作家・脚本家)

    構成力も文章力もある平均点の高い青春小説。ボカロ小説に欠かせない歌詞の完成度も高く、メディアミックス向きの作品だと思いました。しかしながら余命のあるヒロインの死を描くクライマックスのアイデアに強い既視感(偶然だと思いますが)があったことが大きな減点となりました。もちろん料理の仕方次第では独自性を出せたのかもしれないと思いますが、オリジナルのアイデアが持つインパクトを越えられていなかった気がします。

  • 阿南浩志(電撃文庫編集長)

    希死念慮を抱く主人公の自殺を、未来予知の力をもって阻止しようとするヒロイン。そしてヒロインとの同居生活する中で、彼女自身にまつわる秘密が開示されていくという青春小説です。余命ものという既視感のある題材ながらも、しっかりと個性を感じさせ、とくに後半パートは若い読者にも親和性の高い題材を使ってエモーショナルに書き切り、鮮烈な読後感が残ります。終盤のとあるシーンが本当に感動的で、大いに涙腺が刺激されました。

  • 遠藤充香(メディアワークス文庫編集長)

    自殺願望を抱えた主人公が、突然現れた謎の少女に自殺を邪魔されたことから始まるラブストーリー。既視感に陥りがちなジャンル特性の難しさがありながら、ヒロイン設定、ボーカロイドなどの要素で独創性が加わっています。共感し難い点の多い主人公の内面は気になりますが、トレンドをしっかりと意識した、完成度の高い泣けるライトノベルだと感じました。

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