第30回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

銀賞受賞作

『簡単なことだよ、愛しい人』

著/柳之助

電撃文庫

バケモノのきみに告ぐ、

(※応募時『簡単なことだよ、愛しい人』より改題)

著者   : 柳之助
発売日  : 2024年5月10日

カクヨムページ:https://kakuyomu.jp/works/16817330651297574701

カクヨムページ:https://kakuyomu.jp/works/16817330651297574701

あらすじ

城塞都市バルディウム、ここはどこかの薄暗い部屋。
少年・ノーマンは拘束されていた。
どうやら俺はこれから尋問されるらしい。
語るのは、感情を力に換える異能者《アンロウ》について。
そして、『涙花』『魔犬』『宝石』『妖精』。名を冠した4人の美しき少女とバケモノに立ち向かった想い出。
「とっとと倒して、ノーマン君。帰ってイチャイチャしましょう」
「……いや、君にも頑張ってほしいんだけど?」
全くやる気のない最強で最凶な彼女たちの欲望を満たし、街で起こる怪事件を秘密裏に処理すること。
これこそが俺の真なる使命―――のはずだった。
だが、いまや俺はバルディウムを混乱に陥れた大罪人。
魔法も、奇跡も、幻想も。この街では許されないようだ。
でも、希望はある。どうしてかって?
――この〈告白〉を聞けばわかるさ。

受賞者プロフィール

好きな挨拶はこんるる。好きなギアはガングニール。好きなキュアはグレース。好きな必殺技はハートフルレインボー。よろしくお願いします。

受賞者コメント

この度受賞させていただき誠にありがとうございます。高校生の時に一度だけ挑んで一次落選して諦めた電撃大賞に、十数年後の今こうして賞を頂けるとは全く思っていませんでした。web応募を始めてくださった電撃文庫様ならびにカクヨム様には感謝を。これから先新しい道が始まるわけですが、その先の輝く未来を抱きしめられるよう頑張っていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

選考委員選評

  • 三雲岳斗(作家)

    流行の雰囲気や文体を押さえた、極めて現代的なライトノベルだと思います。作品の顔となる主人公やヒロインたちもそれぞれ個性的で魅力的です。このような作品の場合は登場人物たちの台詞回しが重要だと思うのですが、決めゼリフが借り物であることも含めて、言葉選びに若干の物足りなさが残りました。もっと圧倒的にオシャレな方向に振り切ってもよかったのではないかと思います。

  • 三上 延(作家)

    ライトな探偵ものとして楽しめる作品でした。心の闇と異能を抱えたヒロインたちと主人公との関係性が上手く描かれていて、ラブコメとしての完成度も高いです。連作短編の体裁を取りつつ、真相が明かされていく展開は引きこまれるのですが、黒幕キャラの弱さが惜しいです。意外性よりも納得感を取る方が、今作ではよりクライマックスが盛り上がったと思います。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    選考用に配布されたPDFが、web用の原稿をただ縦書きにしただけのもので非常に読みにくく、テンポも悪くて最初の印象は最悪でした。そこで、いや、これはカクヨム投稿なのだから……とwebで改めて読み始めたところ印象はガラリと変わり、テンポよく面白く、ヒロインたちのキャラも立ってバトルも楽しく、と大満足で、実は私が大賞に推したのはこの作品です。もし出力の体裁が違っていたり、web版への誘導があれば、結果が少し変わったのかも……と思うと、残念でなりません。

  • 小原信治(放送作家・脚本家)

    異世界を舞台にした異能者による犯罪というプロットをチャンドラーを匂わせる散文調のスタイルで描いているところにニヤリとさせられました。探偵ものでありながら作者が設定したルールによる異能者の犯罪であるため読み手が推理ゲームに参加し難いのが残念でしたが、作中で「ミステリーでもサスペンスでもアクションでもない」と謳われているようにこの世界観を楽しむ小説なのかなと理解しました。

  • 阿南浩志(電撃文庫編集長)

    探偵役×異能力ヒロインというバディで構成される短編連作です。各話で異なるバディが登場しますが、どの女性もアクの強い色気があります。ビジュアル的にも内面的にも強いインパクトがあり、その上で事件解決にキャラの特徴がしっかりと活かせています。最終章で伏線を束ねるという構造も非常に気持ちがよい驚きを提供してくれました。

  • 遠藤充香(メディアワークス文庫編集長)

    異能者が引き起こす事件を解決に導く調査官ノーマンの事件簿。読み手を飽きさせない工夫された構成に、複数の事件の背後で暗躍する存在との最後の対決まで一気に読み進めることができました。謎解きの合間に漂う探偵役ノーマンのダンディズムと語りが物語を牽引し、ちょっと他にない独特の読み心地が強く印象に残りました。

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