第30回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

選考委員奨励賞受賞作

『Bloodstained Princess』

著/畑リンタロウ

電撃文庫

汝、わが騎士として

(※応募時『Bloodstained Princess』より改題)

著者   : 畑リンタロウ
発売日  : 2024年4月10日

二人が誓いを交わす時、全ての絶望は消え失せる。異端の騎士物語、開幕!

二人が誓いを交わす時、全ての絶望は消え失せる。異端の騎士物語、開幕!

あらすじ

情報因子を操作し、超常の現象を引き起こす者――情報師。彼らは戦争の道具として忌み嫌われる存在であった。ツシマ・リンドウは平凡な情報師であったが、バルガ帝国の反政府組織「嵐の丘」からの依頼で、地方の没落貴族ホーリーの亡命警護を依頼される。その逃避行は、バルガ帝国最強と名高い六帝剣までもが襲撃してくる過酷な旅となる。ただの没落貴族を排除するにはあまりにも過剰な戦力――そして明かされるホーリーの正体。渦巻く帝国の陰謀と、権力者による争いの影、そしてツシマは姉の仇である情報師と対峙する。絶望的な状況を前に、もはや平凡なフリはしていられない。全ての因縁に決着をつけるため、秘めたる力を開放し、ツシマは帝国最強の情報師との決戦に挑む――!

受賞者プロフィール

晴耕雨読を人生の目標にする、土いじりと小説書きが大好きな普通の人。新人賞の選考通過者名簿に名前が載るのがうれしくて、大学生から公募勢を続けている。将来は、畑と山羊と猫と嫁に囲まれて忙しなく暮らしたい。ペンネームの『畑』は大好きな農業から貰った苗字だったりする。

受賞者コメント

この度は身に余る賞をいただき、ありがとうございます。学生の頃に読み親しんできた電撃文庫の作家として末席に加えて頂けることは、文字通り夢のようで感激しています。選考に関わってくださった皆様、またこの作品を押してくださった方、本当にありがとうございます。これからも一文字でも多く、面白い物語を書いていけるように日々精進してまいります。

選考委員選評

  • 三雲岳斗(作家)

    文章力やキャラクターなど評価できる項目は多かったのですが、描きたい物語に対して分量が不足していたためか、特にストーリー面において物足りない印象を受ける作品でした。情報師の設定にもあまり目新しい要素は感じられず、独自の魅力を構築するには至っていないと感じます。ただ選考委員の中には本作を強く推す方もおり、今後の伸びしろや可能性を加味しての奨励賞という形になりました。

  • 三上 延(作家)

    「情報師」による「演算」というガジェットには独自性があるのですが、「情報師」それぞれの特性が分かりにくく、バトルの展開がやや平板に感じました。過去を抱えた主人公と出自を隠した姫ヒロインのキャラ造型は感情移入しやすく、メインキャラを絞って二人の関係をじっくり描いた点も好印象です。一筋縄ではいかない敵役や脇役たちも魅力的で、キャラクター間のドラマがよくできていました。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    一個の作品としてはきちんとまとまっていて、情報師という設定も、ネーミングも雰囲気も悪くはないのですが、つまり魔術や超能力の言い換えにしか感じられず、さらに能力や戦いのルールも説明不足で、あまりバトルのめり込めなかったのが残念です。また、キャラも全般に弱く、あまり惹かれる人物がいないのも厳しい印象でした。ただ、基本的な文章力はあり、作品世界を構築する力もあるので、今後に期待したいと思います。

  • 小原信治(放送作家・脚本家)

    プリンセスの亡命という命題を背負った「情報師」という異能者ボディガードのロードノベル。亡命を阻もうとする追っ手とのスリル満点な駆け引きはよく書けていると思いました。電子マネーや携帯電話が存在する現代でありながら中世のイスラム帝国にでも迷い込んだような舞台設定にはスケール感とオリジナリティを感じましたが、馴染みの薄い土地であるがゆえに脳内でひとつの像を結ぶには描写がやや足りていない印象です。

  • 阿南浩志(電撃文庫編集長)

    個人的に強く推しました。今回の選考作の中で「主人公の格好良さ」という点に着目すると、ダントツでこの作品。やんごとなき皇女の逃走を助けるためにボディガードの役割を追う主人公ですが、刺客と戦う中で見せる卓抜した才気の描写にひたすら痺れます。さらにその上で真の実力を隠していて、復讐のために研ぎ続けていた技を開放するラストバトルは圧巻でした。シンプルに魅力的な主人公の活躍を楽しめる傑作です。

  • 遠藤充香(メディアワークス文庫編集長)

    皇女の亡命というミッションを任された異能者である主人公ツシマの、壮大でスリル満載の逃亡劇。目新しさや驚きは薄いものの、抜群にかっこいい主人公をはじめとする魅力的なキャラ造形が光っていました。文章力、亡命の裏に蠢く様々な思惑を描出しながらも疾走感あるストーリー展開など、様々な要素で技術の高さを感じさせる作品でした。

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