第31回電撃小説大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

受賞作

『古典確率では説明できない双子の相関やそれに関わる現象』

著/アズマドウアンズ

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メディアワークス文庫

古典確率では説明できない双子の相関やそれに関わる現象

著者   : アズマドウアンズ
発売日  : 2025年4月25日

受賞者プロフィール

福岡県生まれ。関東在住。映画を観たり、ドラマを観たり、最近はMMORPGをひとりぼっちで遊んだりしています。
熱しにくくて冷めやすい性格です。

受賞者コメント

この度は名誉ある賞を受賞でき、大変光栄に思います。
応募原稿をアップロードしたのは締切一週間前のことです。そのときには根拠のない夢や希望で一杯でしたが、日が経つにつれて気持ちは萎み、やがては一次発表の前から改稿作業を始めていたほどでした。実は今もまだ自信がありません。
これから実感が湧いて噛みしめてゆくのでしょう。
選考に携わった皆様、特別選考委員の川原礫先生、これまで見守ってくれた家族や友人たちには心から感謝申し上げます。
これからも、私なりの物語を誠実に紡げるよう精進して参ります。本当にありがとうございました。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 遠藤充香(メディアワークス文庫編集長)

    美しいことばかりではない歪な現実を、どこまでもリアルに、それでいてとてつもない眩しさで描いた感性が光る青春小説。双子の兄妹を通し、徹底してドライな語りで紡がれていく、完璧ではない家族と、彼らの理想と現実と希望と絶望。人をままならなくさせる「愛すること」を、世間や物語のステロタイプと巧みに距離をとりながら、見事に小説としてまとめあげた抜群の感性に、はっきり言って痺れました。新たな可能性を確信した、才気あふれる期待の物語です。

  • 川原 礫(作家)

    この物語の主要な登場人物たちは、ほぼ例外なく心に傷を抱えている。その傷をつけたのは背信であり復讐であり挫折であり虐待であり搾取であり、つまるところ多種多彩な地獄がそこかしこにちりばめられているのだが、しかし読み味は驚くほど明るく乾いていて、陰惨さを感じさせない。
    そのバランスを成立させているのは、軽やかなリズムと的確な表現力を備えた文章だったり、細部のリアリティだったりするのだが(大学漫研の空気感は見事でした)、何より主人公である双子の互いを思いやる気持ち、それだけは何があろうと揺るがないであろうという確信が、圧倒的な破局の予感に立ち向かってページを繰る力を読み手に与えてくれる。物語は先読みを許さぬまま、次々と提示される悲劇の兆しをひらりひらりと掻い潜っていく。いくつか気になる箇所がないではないが、この滑走感、バランス感はもはや作家性の域とすら言える。非常に面白かったです。

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