第32回電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

大賞・支倉凍砂賞ダブル受賞作

新編古典心中

著/魚里 (応募時のペンネーム:赤津鯉)

あらすじ

朱古典(しゅこてん)、またの名を呪古典。
実際の古典の名を関したその書物は、持つ者に異形の力を与え、心を支配し、その運命を狂わせる。
朱古典を継承する花香家(かこうけ)の当主であり、『曾根崎心中』の継承者。甘味大好きな、華のJK(ただし引きこもりがち)・花香しのね。
朱古典をその身に宿し、異常な膂力を持つ。見た目はマイルドヤンキー(ただし話すとただの世話焼き男子)な高校生・道徳逢見(どうとくおうみ)。

生活力皆無なしのねのお世話係を兼ねて、逢見は朱古典関連の事件を追うことになる。
不死の古典を悪用し、繰り返し自殺を図る動画配信者。
花香家に恨みを持ち、しのねの命を狙う狙う同級生。
無敵の朱古典を有し、血の海を渡る男装の麗人。

「この朱古典たちはね、ぼくの心中のお供を増やしてるんだよ」
多くの事件を追ううちに、逢見は朱古典を蒐集するしのねの目的が「古典とともに心中する」ことにあると知り……。

これは少年少女の青春小説であり、その駆け抜けた先に待つ、最新の心中小説である。

受賞者プロフィール

埼玉県出身。
中学3年生のとき塾に通い始めるが、塾の下の階が書店だったので国数英ではなく小説とマンガでエンタメの英才教育を受ける。
好きな将棋の戦法は右四間飛車。将来的にどこかの山の中に弓道場をつくりたい。

受賞者コメント

いつかたどりつきたいと憧れつつも、どうせ届かないだろうなと諦めの気持ちが入り混じる。
電撃小説大賞は自分にとってそんな場所でした。このたび栄えある賞をいただき、望外の喜び以上にしっくりくる言葉が見当たりません。
選考に携わってくださった方々、そして特別選考委員を務められた支倉凍砂先生に心から感謝申し上げます。自分が書いたものに何らかの価値を感じていただけたという幸運を噛み締め、最善を尽くします。

選考委員選評

  • 支倉凍砂(作家/特別選考委員)

    まず、単純に面白かったです。そして能力バトルものにまだこういう道があったのかと、悔しく感じました。古典を題材にしたものは、ミステリー分野では見立て殺人や日常ミステリ的なものがあるやもしれませんが、バトルものとなるとなかなかなかったのでは……と思われます。それとこの手のものを書こうと筆を執った方なら共感いただけるかと思いますが、都合の良い元ネタを見つけるのが非常に難しくて、しかもバトルが成立するように選ぶとなると……少なくとも私などは、足がすくむのでした。本作ではその難点を、ある程度元ネタからの大胆な発想の飛躍で乗り越えていますが、同時にそれがバトルに彩を添える結果となっていて、唸らされるのです。それに能力名がいちいち『曽根崎心中』だの演目名になっていたりするのが、中二心をとてもくすぐるのです!
    とはいえもちろんのこと、その手のギミックもすべては本作品がエンタメ小説として高レベルに組み上げられているがゆえに輝いているのだと思います。ヒロインの造形や、バディとしての相方の立ち位置、敵役の敵らしさも素晴らしかったです。

  • 電撃文庫編集部

    「文句なく大賞だろう」――主人公とヒロインが言葉を交わした瞬間、そう感じたのを覚えています。あえて明言するなら、抜群に「ライトノベルらしく」、完成度の高い作品でした。軽妙ななやり取りの随所に、ヒロインのシニカルになりきれない可愛さ、主人公の良いヤツさが、惜しげもなく詰め込まれていました。
    持ち主に呪いの力を与える書物。ヒロインはそれを継承する家系で、その力と『心中』するつもりでいる……と重い設定なのに、気づけば強力な魅力を放つキャラクターたちによって手を引かれて軽やかに走り抜けている。そんな感覚でページをめくる手が止まりません。また古典を題材にした能力も卓抜なアイデアが込められています。とてつもない才能に出会ったものだと感じさせる一作でした。

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