電撃コミック大賞 受賞作 特集サイト
  • LINE
プレゼント
購入する

メディアワークス文庫賞 メディアワークス文庫

「終幕だ——。傑作だったな」華麗なる謎解きの名画座へ、ようこそ。凸凹コンビが繰り広げる、痛快!映画ミステリー

2017/3/24 「読者コメント」追加!
2017/3/10 特別公開!! 斜線堂有紀先生の「文庫発売記念 Twitter連載小説」登場&「著者インタビュー」追加!
2017/2/24 期間限定「試し読み」追加!!(2017/2/24〜2017/3/9)
2017/2/10 「ビブリア古書堂の事件手帖」三上 延先生の推薦コメント追加!
2017/1/25 作品詳細ページオープン!

Twitter連載小説
読者のコメント

推薦コメント

読者のコメント

あらすじ

登場人物

奈緒崎浅葱

奈緒崎浅葱

そこそこ良い大学「英知大学」の学生だが、ドイツ語を落としかけて留年寸前。それがきっかけで嗄井戸と出会う。
実家は元々下北沢にあったが、今は父親のマイホームの夢が叶い、埼玉にある。
戸田で一人暮らしをしている。今が楽しければそれでいいタイプ。いわゆる普通の大学生。ドイツ語も英語も全然出来ない。将来のことを少しも考えていない。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」「ターミネーター2」

嗄井戸高久

嗄井戸高久

映画好きの引きこもり。絶対に外に出ない(買い物はAmazonで済ませる)。下北沢にあるアパート「銀塩荘」の2階部分を全部ぶち抜いてひとつの部屋にして住んでいる(実家はお金持ち)。大学教授から渇望されるほどの天才。
尊大で自信家だが寂しがり屋。
実は面白いこと好きで、事件を持ち込まれるとワクワクして首を突っ込まずにいられない。

A・タルコフスキー「ストーカー」

作中の登場映画

『ニュー・シネマ・パラダイス(完全版)』『独裁者』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『セブン』etc...実在の名画が多数登場!

Twitter連載小説を特別公開!

2017/2/22〜26まで文庫発売のカウントダウン企画として、著者の斜線堂有紀先生のTwitter上で公開されたTwitter連載小説を特別に公開しちゃいます!相変わらず引きこもりの嗄井戸、それに振り回される奈緒崎。いつもの2人の日常トークをお楽しみください。もちろん、映画のうんちくもたっぷり!※現在連載は終了しています。

「宅配ピザが日本に普及したきっかけは、かの『E.T.』だと言われてるんだ。ピザーラの創始者が作中に登場する宅配ピザを観て、日本でも流行ると思ったらしい」「へえ」嗄井戸の薀蓄を聞きながら、垂れるチーズと格闘する。嗄井戸の持っているピザは具が落ちて悲惨なことになっていた。早く食えよ。

「ところで奈緒崎くん」「何」「人の金で食べてるピザに対して何か一言ない?」「めっちゃ美味い」「そういうのじゃなくてね」「何だよ」「僕は『夕飯を買ってきてくれ』と言ったわけで、宅配ピザを頼めとは言ってない」「同じだろ」「違う」憮然とした表情の嗄井戸を無視して二枚目のピザを取る。

徹頭徹尾家から出ないこの男も、霞を食べて生きるわけじゃない。どうしたって食料の調達が必要だ。知り合ってしばらく経ち、嗄井戸はどうやら俺を補給ルートの一つとみなしたらしい。部屋でうだうだと過ごしている俺に「お金渡すから何か買って来てくれない?」と言うようになった。厚かましい話だ。

そうして俺は渡された金でピザを取り、今に至る。「というか言うこと聞いたんだから、約束守れよ」「約束?」殆ど具の載っていないピザを齧りながら、嗄井戸が首を傾げる。どうやらすっかり忘れているらしい。「言うこと聞いたら話してやるって言っただろ」「うん?」「例の、血塗れの部屋の話だ」

「ある男が部屋に入ると、辺りは血の海だった」「は?」買い物に行くのをごねる俺に対し、嗄井戸はそう話し始めた。「血は壁のあちこちに飛んでいた。怯えつつ部屋の奥に行くと、これまた血塗れの男が横たわっていた。彼は耳や鼻から沢山の血が流れていた」「お、おい、何だよいきなり」

「別に。単なる雑談だよ」嗄井戸はつまらなそうにそう言うと、こう続けた。「男は血塗れの彼を抱き起こし、この部屋で何が起こったのか聞こうとした」「……まあそうだよな」「彼は瀕死だったが、最後の力を振り絞ってこう答えた」「……何だよ?」先を促す俺に対し、嗄井戸は冷めた視線を向ける。

「続き聞きたい?」「え、うん」「それじゃあ買い物行って来てくれ」「は?!」「そしたらオチまで話すよ」しれっとそう言いながら、嗄井戸がソファーに横になる。嵌められた、と思った。「……だったら別にオチとかいいし」「へえー」嗄井戸は小馬鹿にしたように言うと、無言で首を傾げた。

どうなったかはご存じの通りだ。俺は好奇心に負けて嗄井戸の要求を飲み下し、逆転の発想でピザを頼んだわけである。「……君、正確には要求呑んでないだろ」「いいから、アレのオチを教えろよ。男は何て言ったんだ?」ややあって、嗄井戸が答えた。「奈緒崎くん。ヒッチコックって知ってる?」

「そんくらい知ってる。鳥が人間襲う映画の人だろ」「……君のその雑な理解は置いておくとして、彼はサスペンス映画の神と呼ばれるような映画監督で、人の心をざわめかせる名作を沢山発表していたんだ」「それが何か関係あんのかよ」「彼は人をからかうのが好きだった人物として知られていてね」

話の転がり方がわからないまま、話を聞き続ける。「エレベーターで一緒になった人間に、先の『血塗れの部屋の話』をしていたらしいんだ」「はあ、けったいな趣味だな」「ヒッチコックはさっき僕が言ったところまで話し終わると、唐突にエレベーターを降りる。乗客は慌てて彼を追う。『オチは?』ってね」

そりゃあそうだ。俺だって気になって仕方がない。現にだからこそこんなことになっているのだ。「そしてヒッチコックは笑顔で言うんだ。『オチは無い』ってね」「…………は?」「そう、丁度今の君みたいな表情を見るのが好きだったんだよ。だから、オチがないことが『血塗れの部屋』のオチなんだ」

「なのにお前、オチをダシに俺をパシらせたわけ?」「いやあ、奈緒崎くんの食いつきっぷりったら。ヒッチコックが見ていたらきっと大層ご満悦だったろうと思うよ」嗄井戸はそう言って、心底楽しそうに笑った。なるほど。……なるほど。ヒッチコック氏もこいつも、大層ご趣味がよくていらっしゃる。

「嗄井戸」「何」ピザの具をフォークで拾い集めている嗄井戸に、俺はなるべく優しく声を掛けた。「俺も似たような話知ってんだけど」「どういうこと?」「あるところにな、男がいてさ、それが自分の家帰ったら血の海だったわけよ」「……それ、僕の話とどう違うの?」「まあ聞いてろって」

「部屋の奥には血塗れの男がいてさ、驚いた家主はそいつのところに駆け寄って、何があったのか聞いたんだ」「……それで?」「男は答えた。『上を見ろ』ってな」言いながら、俺は天井を指さした。「……上?」それにつられた嗄井戸が上を向く。白い髪に隠れた額が一瞬だけ露わになった。

その一瞬を逃さないよう、すかさず手刀を叩き込んだ。「ぎゃっ」という似合わない声を上げながら、嗄井戸がひっくり返る。フォークに積まれたピザの具が、残っていた別のピザに跳んだ。「痛ッ……た……何すんの!?」「お前な、そういうことやっていいのはヒッチコックくらいだからな」

三枚目のピザを手に取りながらそう言ってやる。全く、真面目に聞いて損だった。「……奈緒崎くんのそういうとこ本当に嫌い」「いいからさっさと食えよ」不満そうな嗄井戸に、二枚分の具が載ったピザを差し出すと、嗄井戸は何か言いかけて、結局やめた。それにしても人の金で食べるピザは美味い。

(了)

著者インタビュー

受賞者に一問一答!

斜線堂有紀 キネマ探偵カレイドミステリー

PROFIlE

小説を書くことが死ぬほど好きで、暇さえあれば小説を書いている。それと同じくらい映画鑑賞も好き。好きな映画は『ドリームハウス』。ちなみに一番好きなモンスターは「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム」。

q1受賞作についてご自身から紹介を。

“名前だけは知っているあの映画”や、“いつか観たいと思っていたあの映画”や“長らく観返していなかったあの映画”を観るきっかけになるかもしれない、モラトリアムミステリーです(主人公たちがモラトリアム人間なので……)。

q2この作品を書こうとしたきっかけ、あるいは、最初に浮かんだアイデアは?

暇さえあれば映画を観ていた時期があり、これ自体を何かに生かせないだろうか、と考えたのが執筆のきっかけです。行動に制約がある探偵と、代わりに機動力になる助手という関係性は、大好きな映画『ボーン・コレクター』に影響を受けていると思います。リンカーンとアメリアのどちらが欠けても事件の解決が立ちいかなくなる関係が相棒として理想だな、と。

q3主人公やヒロインを通して描きたかった人物像とは?

不幸に巻き込まれて現実より映画を選んだ嗄井戸と、それを静観するヒロインと、そういう方向性が定まった物語に途中乱入して、文脈も何も全て無視した存在がいたらいいな、というか人生って往々にして乱入してくる第三者に引っ掻き回されるものだよな、と思いながら書いたのが奈緒崎です。人物像というより、人生観ですかね。

q4執筆時に苦労した点または楽しかった点は?

映画について学ぶ機会を得られたことが楽しかったです。文献をあたったり、実際に資料を集めたりすることは、この小説を書こうと思わなければやらなかっただろうと考えているので、僥倖でした。

q5執筆にあたりこだわった点は? またそれがどのように反映されているでしょうか?

名前の語呂の良さです。『矢端束』が執筆していて物凄く楽しいです。嗄井戸高久や奈緒崎も、沢山出てくるだろう固有名詞はなるべく響きがいいものにしようと心がけていました。

q6これまでの投稿歴または執筆歴を教えてください。

小説を書き始めたきっかけはもう覚えていません。書いてみたら楽しかったので、今の今までずっと書いてきました。投稿を始めたのは高校生の時で、受賞までの5年間は完成したものをひたすら目についた賞に送っていました。殆どルーチンワークのようになっていたと思います。

q7これまでの人生で最も印象に残っていることはなんですか?(今回の受賞を除いて)

2階建ての建物と同じくらいの体高の大きな白い犬を見たことです。誰にも信じて貰えません。今でも捜しています。

q8今後書いてみたい作品について教えてください。(続編以外で)

今回はミステリーを書いたので、次はSFやラブコメやファンタジーを書いてみたいです。この世に無数に存在するジャンルを一つ一つ書けたら楽しそうなので、当面はそれが目標です。

読者のみなさんへのメッセージ

映画の好きな方もあまり観たことがないという方も楽しめる内容になっていると思いますので、何卒よろしくお願いいたします。

次回も、読者の皆様から寄せられた感想を掲載予定です!お楽しみに!!

そのほかの受賞作を見る!

第23回 電撃小説大賞 受賞作特集サイトTOPへ戻る
電撃コミック大賞 受賞作 特集サイトはこちら
電撃大賞メダル集め!